テキスタイルデザイナーである施主の住まいとして計画された、埼玉県新座市に佇むマンションのリノベーションである。本計画の核となるのは、空間の境界を極限まで取り払う試み。玄関から寝室、そしてLDKへと続く動線上の扉を徹底して排除。居住空間の床には施設用の無地塩ビシート、壁や天井にはプレーンな白クロスを選定し、人工的でノイズのない、いわば「無垢」な背景を作り上げた。この抽象的な白いキャンバスが、USMハラーやステンレスのミニマルなシステムキッチンといったモダンアートのような家具たちの造形美を際立たせている。しかし、空間は決して単調なミニマリズムには着地しない。LDKに統合された元和室の天井に目を向けると、そこには敢えて躯体現しのスケルトン天井が残されている。滑らかな白の梁型と、荒々しいコンクリートの質感。この鋭利な対比という「遊び」にこそ、デザイナーである施主独自の価値観を反映している。既成の住宅像に囚われず、素材の純度を突き詰めることで、住まい手とともに新たな空間の学びを紡ぎ出す、実験的かつ洗練された住居が完成した。