打合せや接客を行うサロンスペースと、仕立てを担うアトリエを併設したビスポークテーラーの計画である。サロンエリアは、大きな開口から豊かな自然光が差し込む開放的な構成。美しいヘリンボーン張りの床や、ブラックチェリーの重厚な壁面棚を配し、洗練された空気を醸し出す。フルオーダーゆえ既製品は置かず、板巻きの生地やバンチブックを主役とした引き算のディスプレイが空間の格式を高めている。奥のアトリエでは、限られたスペースの中で作業効率を極限まで高める設計が追求された。ほとんどの工程を担う大型作業台は、木材の選定から天板、引き出し式の作業テーブル、足置きの高さまで職人の所作に寄り添いミリ単位で調整。「手作業でしか表現できないことがある」という信念が、細部の機能美に息づく仕立て舞台を結実させた。